山本哲也
部署名: 電子システムビジネスユニット所属
テーマ【隙間を商機にする】
市場にある商機でシナリオを書く
汗を流して強くなるのは、アスリートだけではない。
脳で汗をかく。それが、山本哲也氏のビジネス哲学だ。
「詰め将棋の要領かもしれませんね。我々が『いいな』と感じた製品を、どう売っていくか。どの市場に、誰の手を介し、どういった手順で紹介し、どのように良さをアピールしていくのか、頭の中でシナリオを書く。脳で汗をかくとは、そういう意味なんです」
山本氏が属する電子システムユニットは、汗をかいた成果として、「商材をバランスよく取り揃える」という強さを得た。
現在、同ユニットが扱っている商材の比率は、船舶搭載30%、航空機搭載25%、通信サービス20%、残りが宇宙システム(ロケット、衛星、衛星搭載機器)とその他、というバランス。エアロスペース事業以外の分野にも参入し、これら商材の多くを、過去5年で商権化してきた。
「例えば、参入する市場がシングルソース、つまり、昔の電電公社のように1社が独占している市場なら、競合相手は1社だけなので、比較的新規参入しやすいといえるでしょう。ただ、全くの未知の市場に落下傘的に参入するのはリスクが高すぎるので、仕入先、或いは売込先のいずれかは、既知のパートナーであることが条件となります。従い、我々は市場の有無や、競合の調査に、最も時間を使ってきました。また、新規分野参入の折は、専門知識不足によるリスクをヘッジする為、パートナーの選定に時間を要してきました。」
参入を検討する一方で、撤収も検討しなければならない。「電子機器業界は、スクラップ&ビルドの世界」と、山本氏は言う。
「新しい仕事がひとつ生まれる一方で、陳腐化してしまったプログラムは撤収せざるを得ません。撤収すべきタイミングを逸がしてしまうと、時間とマンパワーをロスすることになります。10人という限られたBUメンバーで効率良く仕事をこなすためには、ある程度ターゲットを絞る必要が有りますし、業務を簡素化する必要もあります」
参入と撤収————こうした変化が必要となる理由は、市場の変化と関係がある。 例えば、航空市場は、防衛関連に携わることで成長してきた。しかし、冷戦終結後は、世界的には軍縮が進んでおり、結果、防衛費も微減、市場が飛躍的に伸びる可能性は少ない。10年単位で見ると、先行きは決して明るくない。宇宙システム市場にも変化が起きている。「かつては、衛星ひとつ打ち上がるだけで新聞の一面で大きく扱われたものです。やりがいのあるビジネスでした。また、衛星の寿命も2~3年ほどで、進化も激しかった。しかし今は、衛星の寿命が10年、15年と延び、結果として市場が縮小しているのです」
商材を広げたのは個々の市場の変化に拠るところが大きい。各々の市場を調べてみると、販売数に顕著な差がある事も判った。航空機搭載機器の販売数は、良くて年間5〜10個ほど。宇宙システム関連機器は、数年で1個である。ところが、船舶搭載機器は年に数百売れる。思えば日本は、『造船大国』として世界に名を馳せた国。車、家電、IT分野が成長し、その影に隠れがちだが、日本の造船技術は、今なお世界に誇れる一大産業なのである。エアロスペース関連機器と船舶搭載部材では価格差があるが、参入先として魅力的に映った。
市場の特性を見抜くことも重要だ。
「自動車産業では、『日本のトヨタ』が世界的に有名ですが、エアロスペース事業には『トヨタ』のような国内メーカーが存在しません」と山本氏。つまり、宇宙航空用電子機器の多くは、輸入に頼っているのが実情。だからこそ、商社に商機(=勝機)があるわけだ。
「海外でどのような製品が作られ、どのような企業が伸びているのか。常にアンテナを張っておく必要があります」
山本氏にとってそれは、ネタ探しのようなものなのかもしれない。脳に十分な汗をかきながら、新たなビジネスシナリオに書き上げるための——————
(取材日・3/31)
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