小野哲
部署名 回転翼機ビジネスユニット所属
テーマ【機種選商戦】
会社の命運がかかった機種選商戦
2003年は、小野哲氏にとって忘れられない年となった。この年、彼が所属する回転翼機BUが防衛庁の機種選商戦に勝ち抜き、大型ヘリコプタEH101の販売を決めたのだ。
EH101は、イギリスとイタリアが共同開発した大型ヘリコプタである。
全長約20メートル、重さ15トン、大人が立った姿勢で動ける広いキャビンと、3基のエンジンを持つその巨漢は、ヘリというよりも、中小型飛行機に近い。値段も大型で、プライベートジェットと同等以上だ。
「絶対に負けられない勝負だった」と、小野哲氏は言う。
理由は、2つ。ひとつは、多大な時間、マンパワー、コストがかけられた商戦であったため。
「機種選商戦は、5~10年というスパンで、地道に準備していきます。また、機種選定が近づくにつれ、マンパワーを集中させて戦っていきますので、投資も大きく、会社にとってのリスクも大きい。結果を残さないわけにはいかないのです」
もうひとつは、この案件の成立が、「今後20年で、事業規模1000億円以上に及ぶ大きなビジネスになる」という見通しだ。
ヘリコプタ事業は部品が多く出る商売といえる。飛行機と比較してみると、約3〜4倍。ヘリコプタが固定翼機と比較し複雑な構造であるためだ。
「ヘリの選定を受けて、はじめて、部品や整備用工具販売というビジネスが生まれます。機種選を通らなければ、なんにもなりません」
国内の販売例では、99年に警視庁に販売した大型ヘリに次ぐ、快挙である。
もっとも、その道のりは楽ではなかったようだ。
防衛庁の機種選では、不可抗力が働くこともある。日本の防衛は、戦後アメリカから軍備を揃えていたという経緯がある。そのため、欧州製のEH101を売り込むのは難しい。また、どの国から軍備を買うのか決定する際には、国策貿易と絡むこともあるからだ。
「脈々と長い期間、提案を続けていく。先を見て、今必要なものを立ち上げていく。その繰り返しです。『勝たなければならない』というプレッシャーもありますが、でも、楽しいですよ。産業界で注目されている仕事ですし、影響力もある。ビジネスの全体図が大きいですから」
商戦後、小野氏は頻繁にイギリスに出張し、部品やサービスの提供について綿密な打合せを行っているという。
「あの商戦は、我々にとってもスタートですし、イギリスにとってもスタートラインです。求められた部品を、タイムリーに提供し続けることができるか、顧客が満足するサービスを提供できるか、未知数なのです」
小野氏の目下の目標は、手中に収めたプロジェクトを「長期安定させること」だ。
警視庁の案件は、機体導入後7年が経ち、運用が安定することにより顧客の評価を得ている。防衛庁の案件も、2年後、5年後、10年、20年といった具合に、評価されていくことになるだろう。
「目先のビジネスを追いかけるより、この案件を安定させ、評価されることに注力したい。それが、次のプログラム、次の機種選商戦につながりますから」 どうやら、息をつく暇はなさそうだ。
大きな商戦の終わりは、新たな商戦のスタートなのである。
(取材日・3/31)
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