犬塚耕一
部署名 民間航空機ビジネスユニット チャーターセールス所属
テーマ【ニーズを掴む】
日本各地からダイレクトに海外へ
新しいプロジェクトは時に、予想だにしない不運に見舞われることがある。
犬塚耕一氏にとって、それは「初年度の洗礼」だったという。
民間航空機ビジネスユニットが、ウィーン向けのグループチャーター事業を立ち上げたのは4年前。ラウダ航空
(F1レーサーのニッキーラウダが設立したオーストリアの航空会社)と提携し、成田や関空を経由しなければ海外へ出られない地方利用者のニーズをくみ上げる、大きな事業だ。
「ウィーンが魅力的なディスティネーションだったのは、人気が上がっている中央、東ヨーロッパの玄関口であったため。ニーズも十分にありましたし、2004年には、試験的に5便のグループチャーターを実施する段取りもできました。」
そして、不測の事態が起きる。当初、予定していた名古屋空港に夜間スポットがなく、駐機できなくなったのだ。
「関空まで30分くらいですので、一度そちらに飛ばして駐機させる案も検討しました。すると今度は、乗組員の乗務規定時間をオーバーしてしまう。できることはひとつしかありませんでした。7泊の旅行日程を、8泊に変更してもらうことです。すでに300名から予約をいただいていたため、旅行会社も大激怒でした。当然ですよね」
結局、旅行会社にひたすら謝り、ツアー日程を延ばすことで事態は解決をみる。幸いにもキャンセル客はほとんど出なかったが、大幅に値引きせざるを得なくなり、犬塚氏本人にも会社にとっても手痛い洗礼となった。
チャーター事業は、「航空会社・チャーター機の確保」「航空局への申請・許可取得」「綿密な調整」が複雑に絡み合い実現する難しい事業である。例えば、出発6カ月前までには、運航機種、おおまかなスケジュールなどを確定し旅行会社へセールスを実施なければならない。映画や機内食などのサービスの調整もしなければならない。到着予定時刻が20分ずれただけ、すべてを再設定することになる。
とくに難しいのは、「機材繰り」だ。2005年16本のウィーン便をスタートさせる時には、運航開始ぎりぎりまで機材の調整が難航し、あわや出発日変更という事態に陥りかけたこともある。結局、ことなきを得たのだが、危うく3,800人以上の予約客に影響する冷や汗ものの事件となった。
事業立ち上げから4年——————、ウィーン行きチャーター便は、確実な事業となった。「モーツアルト生誕250周年」にあたる2006年は、全国各地の地方空港から、259人乗りのエアバス330が飛び立つ。
現在は新たなニーズのくみ上げにも力を入れている。
「カナダ、ニュージーランド、北欧諸国など、魅力あるディスティネーションは他にもありますが、課題もあります。まずは良い航空会社、良い機材を手配できなければツアーは実現できません。日本に十分なニーズがあっても、ディスティネーション先の航空会社に『興味ないですね』と言われればそれまでですから(笑)」
さて、犬塚氏に関して、特筆しておくべきことがある。実は彼は、日本に数少ない丸紅エアロスペースの主力商材ガルフストリームのパイロットという経歴を持つ。つい最近まで、VIPを乗せ、世界各国を飛び回っていた。その後、プライベートジェットの運航管理へと職種を変え、現在に至る。
「パイロット一本でやっていこうと思っていた時期もありました。でも、プライベートジェットの機体販売も、大型旅客機によるグループチャーターも、やってみたら非常にやりがいを感じました。職種がどうこうではないんですね。苦労があっても、結局私は飛行機が好き。その一点につきるんです」
苦難は、これまでにもあったし、この先も、一筋縄ではいかないかもしれない。それを乗り越えさせてくれるのは、犬塚氏が抱く「空」への情熱だ。
(取材日・3/30)
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